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ストーリー

大自然の宝庫 北極圏を行く カナダ・森に生きる

大自然の宝庫であり、伝統的な狩りや生活様式を守り続ける人びとが多く住む北の果て、北極圏。北極圏では地球温暖化がどこよりも急激に進んでいて、そこに住む人々の生活に大きな影響を与えている。また、動物保護の点からも、伝統的なトナカイの牧畜やアザラシ狩りを続けることが難しくなっている。その一方で、油田や鉱山の開発が進められ、自然の姿もどんどん変わりつつある。今、北極圏に住む人々の暮らしは昔とどう変わり、そして、どう未来へと受け継がれていくのだろうか。
イギリス人の冒険家ブルース・パリーが、そんな厳しい環境の中でひたむきに生きている人々や動物たちを訪ねる全5回のシリーズ。大自然が与えてくれるかけがえのない恵み、現地の人々や動物たちとの交流を通して、さまざまな問題や変化と向き合い、北極圏に暮らす人々の今を伝えていく。

第1回はカナダ。ブルースは、昔ながらのやり方でカリブー狩りを続けるグウィッチン族に出会う。そして、資源採掘のために狩りができなくなり、現代社会に適応する必要があると話す先住民の長にも話を聞き、それぞれ違う立場で森に生きる人を目の当たりにする。
冒険家ブルース・パリーが足を運んだのは、広大な森とそこで生きる人々の息づかいが聞こえるカナダ。北部にあるオールドクロウでは、先住民のグウィッチン族が大昔からカリブーを狩って暮らしている。現在でもその伝統を守り、都市部から運ばれてくる値段の高い食料品よりも、現地で取れるカリブーの肉を保存し、一年中食べている。
500kmもの距離を移動しながら暮らすカリブー。狩りを行うのは冬の終わりだが、それも年々難しくなっている。その原因のひとつが、地球温暖化による森の生態の変化である。グウィッチン族はカリブーの保存のため生活に必要な最低限の頭数、しかもオスのみを狩っている。油田開発が進み、野生動物が生息できる森が減りつつあるカナダで、今でも昔ながらの生活を守り続ける彼ら。狩りに同行したブルースは、伝統を守り続ける誇りに満ちた人々の表情と、活気あふれる村の様子を間近にする。
一方で、迫り来る開発の波にのまれて、伝統を失った部族もいる。カナダ北部のアルバータ州の森では「タールサンド」と呼ばれる粘り気の強い、鉱物油を含む砂岩が豊富に採れる。1年中、24時間休むことなく運び出されるタールサンドは巨額の富を生んでおり、今後200年間にわたって採掘できると言われている。給料も他の都市の2倍近く高いことから多くの労働者が集まり、周囲の街もにぎわっている。しかし、開発の裏で広大な森は削り取られ、むき出しの地面が姿を見せている。
ジム・ブーシャは先住民の長で、さらに採掘業者と連携を持つ会社の会長を務めている。ジムの部族は、かつてはこの地で水鳥やヘラジカを狩って暮らしていた。森に生きる彼らの生活が激変したのは1963年。政府による開発が始まり、加えて80年代の毛皮反対運動で収入源であった毛皮の交易が大打撃を受け、政府と手を組むしか選択肢がなくなった。部族が生き残るためには、現代の社会に適応する必要があるとジムは語る。ブルースは、現代社会において先住民が伝統を守り続けながら森で生きていくことの難しさを知る。