BBC地球伝説

  • トップページ
  • 歴史
  • 自然
  • 紀行
  • 文化

ストーリー

野生のオオカミを探せ!~北米の大自然に生きる~ 1 冬

かつてアメリカには野生のオオカミの群れが暮らしていた。19世紀西部開拓時代にヨーロッパから人々が移住してくると、オオカミたちは次第にカナダに追いやられ、20世紀中頃にはアメリカから姿を消していた。ところが、今、ワシントン州にオオカミの群れが戻ってきている。約70年ぶりに現れたこのオオカミを探すため、調査チームが結成された。野生動物カメラマンのゴードン・ブキャナン、生物学者のジャスミン・ミンバシン、オオカミ研究のエキスパート、アイザック・バブコックを中心とするチームは、カスケード山脈の谷間にベースキャンプを構え、まずはその周辺の雪山の大自然の中で、過酷な観察環境のもと、気の遠くなるような根気強さで調査を進めていく。
チームはさまざまな場所で痕跡を発見し、ついに野生のオオカミの映像をとらえた。また、人間とオオカミの対立の歴史にも目を向け、オオカミが戻ることに反対する人々の意見にも耳を傾ける。さらに、発見した事柄についてオオカミ研究の第一人者であるダグ・スミスが分かりやすく解説。彼らがとらえた貴重な野生のオオカミの映像と、なぜそこにオオカミが生息しているか検証する。

調査チームは、かつて野生のオオカミが生息していた西海岸の冬のカスケード山脈の谷間でベースキャンプを張り、新たなオオカミの群れを探す。山中で50台の定点カメラを設置し、樹木にオオカミのにおいを付けたり、遠吠えの声をまねて誘い込もうとするが、なかなか消息がつかめない。そこでチームは地元住民から情報収集を行い、悪天候の中、目撃情報のあった地点を目指し山に入り、ようやくオオカミの足跡を見つける。
調査2週目。アイザックはオオカミの新しい足跡と、オオカミがエサにしたばかりの子ジカの死骸を発見。さらに足跡をたどっていくと、少し前まで使われていた巣穴を見つけることができた。その翌日、ジャスミンは地元の生物学者の協力を得て、オオカミの遠吠えを聞き、姿を肉眼でも確認する。オオカミは遠吠えで感情表現ができ、死を悼む気持ちがあるとされているので、ジャスミンはその声の意味を探ろうとする。
ところが、野生動物規制本部からの連絡で、この群れのオオカミのうち5頭が密猟されて殺されていたことが発覚する。暗いニュースで落ち込むチームに朗報が届く。新たな痕跡が見つかったのである。ゴードンはイヌぞりでオオカミの足跡が発見されたカナダ国境付近を目指し、最後は徒歩でたどり着いた。国境近くの定点カメラの映像で、ついに新しいオオカミの群れを確認することができた。
これらの調査を通して、オオカミ研究の第一人者ダグ・スミスは、オオカミが戻ってくることによって、エルクやシカが増えすぎず、1カ所に固まらないので、木々や茂みが不毛になることがなく、生態系のバランスが保たれると考察する。チームも同じように考えて活動を行っているが、その一方で、オオカミが戻ってくることに反対する人たちもいる。家族や家畜が危険にさらされる地元の牧場主たちにインタビューし、「見たらすぐに撃ち殺す」という彼らの生の意見に、人間とオオカミの長い対立の歴史を感じるのだった。