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ストーリー

プレデターX―最強の肉食恐竜を追え!
前編 海の支配

2007年。オスロ大学自然史博物館の古生物学者、ヨルン・フールム博士は、ノルウェー領のスバールバル諸島で、いくつかの骨のかけらを発見。それを持ち帰って分析したところ、なんと1億4700万年前のものだと判明した。フールム博士はその骨が巨大な生物の骨格の一部だと直感、再びスバールバル諸島へ発掘に向かうことを決意する。
翌2008年。フールム博士は調査チームを率いて再びスバールバル諸島へと赴く。彼らの目的はただ1つ、ジュラ紀の海を支配した巨大な肉食恐竜"プレデターX"の発見だ。1億5000万年前、スバールバル諸島は温暖な海の底だった。しかし、その後の大陸移動と、大地の隆起で島々が誕生。そのため、運がよければ、はるか昔に海底へと沈んだ太古の生物の化石を見つけることができるかもしれない。過酷な気象条件にさらされ、何千頭ものホッキョクグマを警戒しながら、調査チームは果敢に発掘に取り組む。
ついに化石を掘り当てた彼らは、それをオスロの自然史博物館に運び、復元を試みる。次第に明らかになる"プレデターX"の大きさ(体長15メートル、体重45トン)は驚異的だ。その一方で、フールム博士はジュラ紀の海について知るため、英国ドーセットの海岸を訪ねる。風洞実験やロボットを使ったシミュレーションによって、"プレデターX"の泳ぎの秘密が解き明かされていく。

ヨルン・フールム博士が率いる調査チームは、北極圏のスバールバル諸島で謎の肉食動物"プレデターX"の発掘に着手する。雪嵐やカタバ風と呼ばれる厳しい気象現象が続く中、チームはまず前年に残した目印を探し、深さ90センチの雪を掘る。続いて化石の眠る永久凍土層を掘削。作業の途中、埋まっているのはプリオサウルス類の後頭部ではないかと推測された。それも過去に例を見ない大きさだ。最後にチームは巨大な化石を無傷で掘り出すとともに、周囲に散らばる2万点のかけらを回収した。
フールム博士が研究室を構えるオスロ大学自然史博物館では、運びこまれた化石を岩石からより分け、復元する作業が始まった。頭骨と背骨をつなぐ後頭顆 (こうとうか)と呼ばれる部分は、ティラノサウルスのそれの2倍もあった。
さらに、フールム博士は"プレデターX"の生息環境を理解しようと、イギリス・ドーセットの海岸に赴く。ジュラ紀の化石がよく見つかる場所だ。化石の採集をライフワークにしてきたスティーブ・エッチーズにコレクションを見せてもらうと、巨大なプレシオサウルスの骨に傷が付いており、その形がプリオサウルスの歯の化石と一致する。"プレデターX"のパワーを示す初めての物的証拠だった。
海の爬虫(はちゅう)類の専門家、パトリック・ドルッケンミラー博士は、化石を元に"プレデターX"の大きさを算出した。それによると体長15メートル、体重は45トンで、ティラノサウルスの6倍だ。4枚のヒレはそれぞれ長さが3メートルあった。次の課題は彼らがどう泳いでいたかだ。デューク大学のローレンス・ハウ教授とフランク・フィッシュ博士は、絶滅した動物の動きを、模型を使って割り出した。ヒレの模型を風洞に入れて分析したところ、ヒレは驚くほど効率のいい推進装置であることがわかった。実際、彼らは4枚のヒレのうち、2枚を使うだけで泳ぐことができたのだ。ではなぜ4枚もヒレが必要だったのか? バッサー大学のジョン・ロング教授は、4枚のヒレを持つロボットで"プレデターX"の動きをシミュレートした。その結果、最高速度はヒレ2枚でも4枚でもほぼ同じ。違うのは加速の速さだった。つまり"プレデターX"は、普段は2枚のヒレだけを使って泳ぎエネルギーを節約。狩りの時だけ4枚のヒレを使っていたのだ。