BBC地球伝説

  • トップページ
  • 歴史
  • 自然
  • 紀行
  • 文化

ストーリー

キリスト3つの名画の謎 ~その誕生に隠された真実~
第2部 サルバドール・ダリ「十字架の聖ヨハネのキリスト」

20世紀のスペインの画家サルバドール・ダリは、時代の最先端の思想と画風によって、人々から奇才と呼ばれていた。シュールレアリスムに傾倒した後、その思想を捨ててカトリック教徒になり、「十字架の聖ヨハネのキリスト」を製作する。そこには、筋肉美を誇る美しい体のキリストが、故郷の風景の中、計算されつくされた幾何学的なパースで描かれていた。キリストを上から見る構図は、これまでにほとんど類をみない作品である。
ダリは、実際にハリウッドでスタントマンにポーズを取らせ、その写真を元に描いたのだった。番組では、その様子を再現する。
完成した作品は、著作権ごとグラスゴー市が高値で買いとるが、貧困にあえぐ人々を尻目に大金を投じたと、社会的批判を浴びる。また、カトリック的な絵の内容は、グラスゴーの主流である長老会派を怒らせる。多くの批判を受けるが、この作品は現在ではスコットランドで最も人気のある絵画に選ばれている。
ダリの描いた美しいはりつけのキリスト像は、私たちにいったい何を伝えようとしているのだろうか?ダリの心の中には、何があったのだろうか?

「十字架の聖ヨハネのキリスト」は、1950年代初頭、ダリが描いた二つの十字架のキリスト像のうちの最初の作品である。この作品について、彼は、"宇宙的な夢"を見て、原子核というキリストの像を見たと語っている。
16世紀のスペインの神秘主義者である十字架の聖ヨハネが描いたキリスト像を見て、その確証を得たダリは、三角形の中の円で十字架とキリストを表現している。それを元に、ダリは美術の世界でも珍しい、キリストを上から見ることで逆三角形を作るパースに到達した。「私は三角形と円から成る幾何学的なパースを考案した。それは私のこれまで美学の結集である。私はキリストを三角形の中に置いたのだ。」とダリは述べている。
それは、ベラスケスとルナンの絵画から取り出された人物の絵が描き込まれたダリ風の風景の上に描かれた。
作品が初めて展示されると、多くの批評家の非難を浴びたが、熱狂する見物客もいた。現在、この作品はグラスゴー美術館で最も人気を集めている作品である。